3-012 満月―みつるつき―

3-012 :満月―みつるつき―:2011/10/24(月) 00:51:33.45 ID:AGjQIj8P

二十二になる年、前田又左衛門利家は妻を娶った。
十も下の、やっと十二の少女である。
しかも、同じ館で暮らしていた、兄妹のような幼馴染である。
名を『まつ』という。

母同士が姉妹である又左とまつは、従兄妹同士であった。
まつは幼い頃に父を戦で亡くした後、他家へと再婚した実母と別れ、その縁戚の前田家、荒子の城に独りきりで引き取られてきた。
前田家は四つになるまつを温かく迎えた。
明るく気丈な性格で、泣き言も涙も見せず、健気に前田の暮らしに馴染んでいこうとするまつは、荒子の館の者皆から愛された。

そんなまつを、又左衛門も犬千代とよばれた少年の頃から可愛がってきた。
もちろん、妹のような存在としてである。
時には、男勝りなところもあるまつの悪戯を叱り、時には母を思い出して寂しさに耐えるまつを、よく遠乗りに連れていったものだった。
それも怖がらずに、又左の気遣いを察して嬉しそうにしていたまつである。
引取られて一年のちに又左は織田家へ出仕し、年に数度しか顔を合わせなくなるが、まつのほうは又左への想いを一途に胸に秘めて成長していった。

そんなまつの想いを知ってのことか。
当時の荒子城主前田利春は、四男の又左衛門とまつの婚礼を決めたのである。

まつとの婚前より、女物の着物や毛皮などで装い、派手な傾奇者の風体を好んで、信長やその若党と街を闊歩していた又左だった。
六尺を超える長躯に、朱鞘の太刀を腰に差し、ケンカとあらばすぐさま首を突っ込むほどの喧嘩好き、粗暴なふるまいも目立つ乱暴者である。
そんな荒々しい気性は、戦場でいかんなく発揮された。
『槍の又左』の異名をとり、愛用の長く派手な朱塗りの槍を振りまわして、戦で数々の武功を上げてきた。

この頃、又左は信長直属の精鋭部隊、赤母衣衆筆頭になっていた。
主君のおぼえめでたく、周りからも有望視され、まさに順風満帆といった頃である。

お前とまつを娶せる、と父利春から聞かされた時、又左は素直にそれを受け入れた。
見知らぬ余所のおなごを娶るより、見知ったおなごのほうが良いものだと思ったからだ。
それに、まつは荒子に引取られてきた頃から、よく自分になついていた。
ただ、さすがの又左も、まつの年齢のことだけは気にかかっていた。





婚儀もひとまず落ち着き、いよいよ初夜、という段になり――。
又左は、まつの室を形ばかり訪うことにしていた。
まつとこれからのことについて、夫婦水入らずで話をするだけのつもりでいたのだ。
荒子の居館の、あてがわれた新婚夫婦のための一室で、新妻のまつは一人待っていた。
わざとらしく、ごほん、とひとつ咳払いをして、中に入る。

「待たせたかな、おまつ」

3-013 :満月―みつるつき―:2011/10/24(月) 00:54:03.60 ID:AGjQIj8P

夜具の敷かれた室の奥の片隅で、まつが慌てて面を伏せた。
できるだけやさしく声を掛けたつもりだったが、まつは体を硬くして縮こまってしまった。
三つ指をついて何か呟いたようだが、普段の溌剌とした振る舞いからは想像できぬほど小さな声で、聞き取ることはできなかった。

「あーあ、くたびれたな」
「……はい……あ。い、いいえ」

又左は夜具の上に、どっかと腰を下ろし胡坐をかいた。
驚いたのか、うつむいたままのまつの体が揺れた。

「もっとこちらに寄らぬか」
「…………はい」

そろりそろりと座ったままにじり寄って、まつは夜具のすぐ脇にきた。
ますます体を硬くしている。
ふと可笑しさが込み上げてきて、又左はふき出しそうになった。

「なにもとって食おうというのではないぞ。そんなに俺が恐ろしいか?」
「いっいいえ!」

慌てて頭を左右に思い切り振って否定するまつのしぐさは、新床を前にしているとは思えぬほど幼いものだった。
またも可笑しさが込み上げてきた又左は、そのまま声をあげて笑った。
まつがびっくりした様子で、顔を上げた。

「やっと顔を見せてくれたな。なに硬くなってんだ。少し前までは、すぐ俺の膝に上ってきたくせに。俺はお前の夫なのだぞ」

「……あ、あの」
「ここへ来い。久しぶりに俺の膝に座れ」
「……でも」

業を煮やした又左は、大きな体をすばやく動かし、まつを抱き上げて己の膝へと座らせた。
まつは跨りそこねて、曲げた片膝でちょこんと乗っかり、又左と向き合う形になった。
まばたきする間のことで、声をあげることもできなかった。

「今宵はおまえと昔話でもするつもりでここへきたんだ。いけないか?」
「むかしばなし……?」
「おまえが荒子へきてからのことだ」
「ここへきたころ……」

真下を向いていたまつが、又左から目をそらしたままとはいえ、顔を上げ懐かしそうな表情になった。

「……またざさまは、いつも私のそばにいてくださいました」
「それはな、傍で目配りせぬと、おまえの悪戯が過ぎるからよ」
「ひどい、お犬さま! 私はそんなに悪戯ばかりしていないわ」

思わず、というふうにまつが抗議の声をあげて、又左をキッと見上げた。
男兄弟の多い、荒っぽい家風の前田家に育ったゆえか、気は強い。
又左もそんなまつの気丈さを知っているから、面白半分である。

「忘れたか? あれは……しかし、俺がすでに吉法師さまにお仕えしていたころか」

3-014 :満月―みつるつき―:2011/10/24(月) 00:56:48.35 ID:AGjQIj8P

まつと又左は、一年ほどしか一つ屋根の下で暮らしていない。
まつが引取られてきた翌年には、又左は信長の元に召し抱えられたのだ。
召し抱えといってもこの時代、領主の四男坊など、この地方の筆頭勢力である織田家へ、いわば人質として差し出されたようなものである。

十四の頃初陣を果たし、織田家の若党として目覚ましい活躍を見せ始めた又左は、信長の寵愛を受けて一身に仕えてきた。
そうなると、しだいに実家から足が遠のき、年に数回しか帰らなくなっていった。

「おまえは明日納めに行くはずという絵馬に、悪戯書きをして……」
「ひどくお犬さまに叱られました」
「覚えてるのか。あの時はえらく泣きおって」

又左は当時を懐かしく思いだした。
泣きやまぬまつに、叱ったはずの又左が、逆におろおろとあやす破目になった。

「それはもう。久方ぶりに戻られたお犬さまは、とても大きくおなりで、近寄るのも恐ろしいくらいでしたもの。でも」

口調も滑らかに、当時を懐かしく思いだして語るまつの体から、少しづつ力が抜けていく。

「あの日はお勤めへ戻られる前の日でした。大好きなお犬さまとまたお別れしなければならないと思うと、さびしくて」

可愛らしく小首を傾げて、上目遣いにそっと又左を見上げる。

「俺に当てつけたのか」
「当てつけるなど。私は……あの時の私は……」

照れているのか、目を伏せたまつは、又左の襟を掴んだ自分の手の甲に向かって囁いた。

「どうしてか、お犬さまに叱って欲しくて」
「ひねくれておるなぁ」
「……ふふふ」

まつが顔を上げ、柔らかい表情で穏やかに笑った。

いつの頃からか荒子へ戻るたび、城戸が見えてくるとまつの顔が浮かび、胸に得も言われぬ安堵感が広がるようになっていた。
出迎えの者の中に、一番にまつの小さな姿を探すようになっていた。

それは、自分の領内や実家を見て安堵するのと同じだと思っていた。
又左自身、幼いまつに恋慕や思慕を抱いていたとは思っていなかったのだ。
とはいえ、まつとの婚礼の話が出る少し前から、娘らしく育ったまつに、まぶしいような思いを抱くようになっていたのも事実。
それが、他のおなごを見るような気持ではなかったから、又左は、自分がまつに肉親以上の情を持っているとは思えなかったのである。
しかし、又左の中で、まつが特別な存在になっていることだけは間違いなかった。

「やっと普段のまつになったな」

又左は笑みの残るまつに顔を寄せると、そっと頬と頬とを合わせた。

3-015 :満月―みつるつき―:2011/10/24(月) 00:59:10.14 ID:AGjQIj8P

まつが館にきた頃から、幼いぷっくりした頬に頬ずりするのが、好きだった。
あの頃、小さなまつが駆け寄ると、必ず抱き上げてこうしてまつに頬ずりをした。

「おいぬさま、いたい」といつしか又左の髭を嫌がるようになり――九つを数える頃、まつは又左の傍に寄ることはなくなっていった。

「柔らかな……少し痩せたか?」

胸元で、又左の襟を掴むまつの手が押し返すような動きをしている。

「お、お犬さま」

思わず又左を幼名で呼んでしまい、慌てて「おまえさま」と言いなおしている。
そんなまつが可愛らしく、初々しい。

「妻とは、このように愛しいものか」

込み上げてきた衝動に、喉が鳴った。
それを抑え込んで、そっとまつを抱きしめる。
六尺を超える偉丈夫の又左の体に、小柄な上にまだ十二のまつの体は、あまりに不釣り合いに見えた。
抱かれると、又左の体にまつがすっぽりと隠れてしまうようだ。

「少しだけ、睦んでいってもよいか」

そう言うと、まつの返事も待たずに背中にまわされた大きな掌が動き出し、まさぐるように撫で始めた。
灯明にまつの体が映えるように、抱きかかえたまま体をいざらせて、その顔を覗き込んだ。
まつの目が、潤んでいるように見えた。

「嫌か?」

まつは首を左右に振った。
ふと、又左は、まつに床化粧が施されているのに気がついた。
聞くと又左の乳母に、湯をつかって体を磨きあげられ、仕上げとばかりに顔に化粧をされたという。
恥ずかしげにうつむいたまつの顎を指先で持ちあげて、まじまじとその顔を見つめてみる。
化粧と言っても濃いものではなく、薄明かりの中で美しく映えるように施されていた。

「ほう。装えば……よく似合うものだ」
「まあっ……どうせ、又左さまの周りのおなごとは比べ物になりませぬゆえ」

ぷう、と頬を膨らませる。

「台無しだぞ」

先ほどのしおらしさはどこへやら、である。
くっく……と、自然に笑みがこぼれる。

「まあ、そのほうがおまえらしいな」

又左は、まつの頬を指でつついた。

3-016 :満月―みつるつき―:2011/10/24(月) 01:02:05.33 ID:AGjQIj8P

「他のおなごと比べるのなら、まつは一生お化粧などしないわ」
「おい、拗ねたのか」
「私のこと……又左さまはどうお思いなのですか? 形ばかりのめおとと思っているのでしょう」

眉をしかめ又左を睨みつける表情が、子どもらしくもあり、逆に大人びてもいて、どきりとするような妙な色気を醸している。

「もう悋気か……先が思いやられるなぁ」
「今まで又左さまが知らなかっただけです。私は荒子にきたあの日から、ずっとお犬さまが大好きでした」
「俺も、まつが好きだったぞ」
「きっとその“すき”とは違うとおもいます」

下から見つめるきらきらとした瞳は、まっすぐ又左をとらえている。

「私は、ずっと、又左さまが大好きでした」

言い終えると、まつは慌てて目を伏せた、
うつむいた頬が、見る間に朱く染まってゆく。
又左はもう一度、まつの顎に指を添えて上向かせた。
顔をよく見たかった。
唇の紅が、色香よりも、初々しく瑞々しいまつらしさを出している。
そのふっくらとした唇が、艶やかに揺れた。

「美しいな。食んでしまおうか」

何か言おうと開きかけたまつの口唇を、又左の唇が覆った。
しばらく食むようにした後、ついばむ。
まつの後頭部を掌でつかまえて、角度を変え、少し強引に舌を割り入れた。
まつが、健気にそれに応えてきた。
又左の舌に、小さな舌が最初はそっと、次第にしっかり絡みついてくる。

男の欲情が一気にせり上がってくる。
まつを押し倒そうと体を抱え直した時、苦しげな呻き声が漏れてきた。
小さな体が小刻みに震えている。
又左は、細い肩を引き剥がすようにして、顔を離した。

「すまぬ…………」

絞り出すように出した声が、かれた。
まつが目尻に光るものをたたえながら、深い息を繰り返している。

「俺は引きあげることにする。ここにいると、まつをいいようにしてしまいそうだ」

又左は、初夜の夫らしからぬ気遣いをみせ、ぎこちなく笑った。
腹の底では、先ほどから、まつを夜具に押し倒し欲情に任せて抱いてしまおうとする己と葛藤している。
けれど、まつの体には男女の営みはまだ早い、という思いが、その衝動をなんとか抑え込んでいた。

「だめ!」

膝から下ろされそうになったまつは、がば、と太い首に両腕を回し、しがみついてきた。

3-017 :満月―みつるつき―:2011/10/24(月) 01:04:14.59 ID:AGjQIj8P

「な、なんだ、まつ……っ」
「ここにいて! お情けを……又左さまのお子が欲しいの」
「いそがずとも……」
「まつはもう大人でございます! 月のしるしも、ちゃんと」

子をなすことが可能になったから、父は又左と娶せることを決めたはずだった。

「又左さまはすぐにまた清州に行ってしまわれる。そうしたら、また遊び女のところに行くのでしょう?」
「そんなことはせぬ」
「うそ」

まつは拗ねて、又左の肩を、きゅ、とつねった。

「今宵、夫婦の契りを……まつは又左さまといたいの」

又左にぎゅっとしがみついた小さな体の中から、せわしない鼓動が伝わってくる。
うなじにまつの温かな吐息を感じたとたん、体の奥に燻っていたものが再び一気に噴き上げてきた。
それでも、又左は次第に荒くなる呼吸を抑えながら、辛うじて気遣う言葉を口にした。

「まつには辛いかもしれないのだぞ」
「私は、だいじょうぶ……」

しかし、それが限界だった。
まつが言い終わらないうちに、膝の上に座ったままのまつの帯を解いていた。
肩に手を置き、衣の合わせ目に指をかけた。

「あ」

肩を撫でるように、衣を滑らせ、肌をあらわにしてゆく。
小さな膨らみがふたつ、薄桃色の尖端を尖らせて現れた。
たまらずそれに吸いつく。

「あぁっ」

まつは胸を弄る又左の頭に片手をまわし、抱えるようにしがみついた。
脚が崩れ、又左の片方の太股に跨る少女の秘部が、肌に強く押し付けられる。
その間にもまつの着ていた物はすべて取り去られ、灯明に未成熟な裸身が晒された。
又左の太股に押し付けられた、繁りのない女陰がじんわりと温まってくる。

まつの脇を手で支え、細い肩、首筋、そして杯を伏せたような乳房を又左の舌が這ってゆく。
感じているのか、徐々にまつが股間を開いてゆく。
又左の片膝を挟みこんだ柔肌に、きゅう、と力が加わった。
まつは、片手で又左の肩に爪を立て、片手で又左の頭を胸に押し付けるようにしながら、腰を揺らし始めた。
そこに、わずかなぬるみが生じてきていた。

「おとこを知らぬくせに……ずいぶんと物欲しげな動きをする」

又左が耳元でつぶやくと、まつはその肩に額をつけ、いやいやとかぶりを振った。
しらない、しらない……と涙声で何度もつぶやいている。

3-018 :満月―みつるつき―:2011/10/24(月) 01:08:08.31 ID:AGjQIj8P

可愛らしい仕草に、つい加虐心が湧き、まつの耳たぶに舌を絡めた。
舐りまわし、耳穴にも舌を入れて奥まで嬲る。
悲鳴を上げて、まつが体を仰け反らせた。
ちょうど、乳房を又左の眼前に突き上げる格好になる。
小さな花のような薄桃色の乳輪と、尖りきった乳首。
先ほどまで舌で嬲られていた胸乳は、又左の唾液にまみれ、灯明の光をてらてらと映している。

思わず、小さな乳首に吸いついた。
口に含み舌で転がすと、腰の揺れがいっそう大きくなった。
膝に女陰を擦りつけるまつの腰に、手を添えてやる。
空いた手を、もう片方の膨らみに置いた。
太い親指を左右に軽く振って、尖りを弾く。
咥えていた乳首を甘咬みすると、まつは身悶え、頭を振りたてて子犬の甘えるような鳴き声をあげた。

肉の薄い平坦な体は、灯明のつくる濃い陰影の中で、狂おしげにくねった。
上気して桜色に染まり、又左の愛撫に魚のように跳ね上がる。
漏れ出る喘ぎは、今や艶を帯びて、甘い吐息とともに又左の耳朶をくすぐった。

初めて聞くまつの拙い『おんなの喘ぎ』が、次々と耳を打ち、又左を昂らせていく。
膝の上のまつの女陰が、ぬるぬると、皮膚を舐めるようにぬめり始めた時。
又左は己の中の抑制の箍を、外した。
軽々と体を抱き上げると、夜具に横たえ、すぐさま成長しきらぬ体のそこここに、舌を這わせ始めた。

くびれの少ない脇を啄ばまれては、まつが身を捩る。
両手を逞しい腕で易々と纏められて動きが封じられる中、くすぐったいのと気持ちがいいのとで、何度も悲鳴ともつかない声をあげた。
やおら両脚を割られ、とうとう潤みの増した体の奥を弄られ始められれば、羞恥と快楽に総身を真っ赤に染めて、高い悲鳴をあげる。

さらに、枝のような指と思しき硬い先端に、長らく排泄の場所としか知らなかった内股の奥がこじ開けられた。
熱い息が吹きこまれるような感覚の後、ぬるりとした生温かいものが体の中に忍び込んできた。
気持ちの悪いような、良いような初めての口淫に、体を激しく揺さぶり、又左の縛めから逃れようとする。
無駄なことと思いつつも、まつの体は勝手に反応する。

又左は又左で、残った理性で、できるだけまつのこわばりをほぐすつもりの手管であったが。
まつの下腹部に頭を押しつけ、夢中になって、得物を貪る獣と化している。
又左とて、余裕が無いのだ。
嫌、こわい……と、何度もうわ言のように、まつの口の端に拒絶の言葉が上るが、今はそれが届くはずもない。



まつの痛々しげな喘ぎに、再びあきらかな艶声がまじり始めた。
ようやく又左は顔を上げ、まつの顔を顧みた。
羞恥に苛まれた険しい表情はすっかり消え、今は、初めて与えられる快楽に翻弄されまいとしているようだった。
切なげに眉を寄せ、やっと縛めを解かれた手で、夜具をぎゅっと握りしめている。
そのくせ、口淫に夢中になっている又左に差し出すように、腰を浮かせた。

3-019 :満月―みつるつき―:2011/10/24(月) 01:11:31.54 ID:AGjQIj8P

「ここに」

やっと温かくほぐれ始めた、柔らかな肉のあわいに、指をあてがう。
滲みだした少女の陰水と男の唾液にまみれたそこは、又左の指をやんわりと飲み込んだ。
まつの体がびくん、と揺れた。

「俺のをいれる」

たどたどしく又左が宣すると、ほんの一瞬間があいた後、まつはこくん、と頷いた。







又左の怒張がまつの体を貫いた時、案の定、小さな体は耐えることができなかった。
まつは気を失って、又左を慌てさせた。
十二の少女には、どれほどきついことか、頭ではわかっているつもりだった。
けれど、あのようにまつから求められれば、断ることなどできるはずもなく……又左とて、二十二の若い男なのだ。

初夜の床ではまつに、何一つよくしてやることができなかったと又左は後悔している。
あれから、しばらくは荒々しい欲情が起きぬよう、まつとは軽い抱擁にとどめる日が続いた。
又左なりに堪えに堪えての、反省の日々、である。
まつが、元来丈夫な体にもかかわらず、さすがに初夜の翌日は昼過ぎまで起き上がれなかったからだ。

前田又左衛門が幼妻を娶ったことは、またたく間に織田家中に知れ渡った。
夫婦の営みなど無理な事……と、同情をする者もいた。
当然、若い欲望を吐きださせようと、よからぬ遊びに誘う声も後を絶たなかった。
実際、長躯で見目の良い又左は、婚姻が決まるまで、信長に随行し、取り巻きの若い衆共々城下を遊び回ることもたびたびあった。
まつも幼い心で随分気をもんでいたであろう。
根が実直な又左は、この期に及んでまつを裏切らぬように――もとよりそのつもりはなかったが、城の若い家来衆の誘いには一切乗ることはなかった。

荒子の館から、清州城下の武者長屋へ移った夜。
新しい閨で、まつの体は又左を受け入れた。
当然、激しい痛みに歯を食いしばって夫の精を受けることとなり、まつにはかなり辛いものとなったはずだ。
しかし、又左もさすがに今度ばかりは欲情を抑えきれなかった。
まだ幼いとはいえ、まつとは形ばかりの夫婦ではない。
まつもそれをのぞんでいる。
今宵からは、可愛い妻とふたりきりなのだ――この世のどこに、新妻の魅力にあらがえる夫がいるだろうか。

3-020 :満月―みつるつき―:2011/10/24(月) 01:14:03.43 ID:AGjQIj8P

終えて泣きだしたまつが、嬉し泣きだと気付くのに、又左はしばらく時を要した。
今度こそ又左さまの妻になれました――腕の中で泣きじゃくる小さな妻の背を、夫は静かに撫で続けた。
初夜と同じく、夜具には破瓜のあかしが散っていた。



***



「まつ」

もう、何度高みに追いやられたか、わからない。
又左の呼びかけにも、応えを返せず、ただはあはあと息を繰り返すのみである。
前から、後ろから、激しく突き上げ続けた夫の情欲は、今度こそ果てたのだろうか。



初めて妻として抱かれてから、幾月か過ぎていた。
家に居る間、又左は夜毎まつを求めた。
長く家を空けた後、まつの月の障りの明けた後。
又左はことさら強くまつを欲しがった。

閨での又左は、年相応に滾る欲をなんとか制してまつに触れ、こわばる体を辛抱強くほぐしていく。
まつの潤みが足りぬ時は、秘所を溶かさんばかりに舐めつくし、蜜液を誘い出した。
そうしてまつの負担を、少しでも軽くしようとしていた。

平素は荒っぽく無骨な又左が、できるかぎりの優しさと手管を持って、まつを訪う。
それだけでまつは、痛みをこえて、充分過ぎるほど幸せを感じられた。

ただ、時々は又左も滾るもの抑えられず、まつを手荒にしてしまうこともあった。
これには、受けとめるまつも大変だったが、仕方が無いことと諦めてもいる。
戦から幾日かぶりに帰宅すると、まるで飢えた獣のようになってまつを抱くのだ。

十日ぶりの今日とて、帰ってくるなり、いきなりまつを抱きあげて部屋の奥へと連れ込んだ。
毎回驚いて抵抗を試みるも、まつはしだいに、又左のなすがままになってしまう。
又左が愛想を尽かして、遊び女のところに行くのではないかと心配になってしまうからである。
それでも、着物をすっかり脱がされると、一応まつは又左に『お願い』をした。

「おまえさま……おねがいよ、やさしくして……とっても怖い」
「わかっている」

上の空、というような返事で、ほんとうにわかっているのかは、あやしいものだ。
まつの顔をのぞき込んだ又左の顔つきは、全く余裕がないものになっているのだ。
口に吸いついた後は、ささやかな胸に手を伸ばし、股間に顔を埋めてゆく。
夫の愛撫に、不安の中でも多少の快感を感じながら、ようやくまつが切なげな息を漏らす頃。
又左は、まだ濡れない秘所にたっぷり唾液を送り、性急にまつの中に己を沈めた。

3-021 :満月―みつるつき―:2011/10/24(月) 01:17:06.62 ID:AGjQIj8P



ぐったりしたまつの頬に愛おしげに頬をすり寄せながら、又左が後ろから抱きすくめる。
吐精後の雄が、まだまつの中にとどまっている。
すぐに、繋がったままのまつの体は床からふわりと浮きあがり、軽々と表に返された。
又左と向かい合わせになる。
下から見上げたとたん、又左の顔がすぐ近くに降りてきて、まつの口が塞がれた。
軽くついばまれた後に、強く吸われ、口中を侵される。
そうしているうちに、擦れてひりひりとしている繋がったままのところが、少しづつ温まっているのに気づく。
どろどろと溶けたような感覚のそこに、夫の放ったぬめりがあった。

徐々に、差し込まれたままの陽根が起き上がり、窮屈な女肉を拡げ始めている。
まつは以前のように、それを、引き抜きたいような気持にはならなかった。
痛みを感じつつも、体の中に、熾火のようなものが残っているのを感じている。
近頃、一夜の内に二度三度と欲されて後、生じてくることのあるこの感覚に、少し戸惑いをおぼえている。
少し前から、わずかずつだが辛さが軽くなって、夫の困った要求に苦笑しながら応える余裕もできてきた。
そればかりか、与えられる快感に自分を見失いそうになることさえあるのだ。

今宵は、幾度目になるだろう――。
まつのことはお構いなしに、又左は再び挑みかかった。

餅のような白い内腿に押し付けるように、又左が腰を捏ねまわす。
搗くたび、まつは切なげな声をあげた。
恥毛もまだ薄らとしたそこは、太い男根に穿たれ、花弁もこれ以上ないくらいに拡げられていた。
男根が出入りするたび、痛々しくめくり上がった花弁が、赤く爛れ始めているのが見える。
それでも、今度は何か違っていた。

まつの中の熾火が少しづつ燃えだし、体中を熱く燻し始めている。
又左に、繋がりの上にある部分を指で触れられると、背が跳ねた。
無骨な指先が、器用に花芽を剥きだして、その先をかすめてゆく。
思わず、歓喜の声が口をついた。
痺れるような鋭い感覚と、熱く溶けだすような感覚に、意識がどこかに行きそうになり怖くもなった。
不安になり、まつのほうから又左の口を吸いにいく。
拙く唇を近づけてくるのを、又左はさらうように吸いついた。

その間も、突かれ続ける女肉は、夫の雄を、まるで舐めまわすかのようにみっちりと押し包んでいる。
幾重にもなった襞に包まれ、今度は又左のほうが思わず呻き声を漏らした。

3-022 :満月―みつるつき―:2011/10/24(月) 01:19:19.22 ID:AGjQIj8P


いつのまにか、まつの陰所は、初めの頃の頑なな幼さを失くしつつあった。
まつは時折見せるようになった、とけるような恍惚の表情を見せ、逞しい又左の背に、腕をまわした。
力なく開いた口元からは、啜り泣くような切ないうわ言がこぼれ続けている。
脚までも又左の腰を挟むようにして、全身でしがみつき、細腰を浮かせて又左を深く咥えこもうとする。

誘われるように、又左はまつの腰を膝の上へと抱え込み、自分の腰に引き寄せた。
奥へ奥へと突きまわし、時折捏ねる。
繋がったところから、じゅぶじゅぶと陰水が溢れて、互いの股間を濡らした。
先に注がれた自分の精とまじりあった愛蜜が、泡立って、又左の根元に白い輪をつくってゆく。

まつの体は、かろうじて肩から先が夜具に着くだけで、あとは又左に抱え込まれていた。
ふわふわと揺らされるかと思えば、時折がくがくと揺さぶられ、夫のなすがままになっている。
けれど、大きな体躯に上からのしかかられたまつは、今は辛さを感じていなかった。
深く突き込まれるたび、夜具に広がった黒髪が、さわさわと生き物のように揺れている。

「もっとおく……奥までっ、またざさま!」

普段なら憚るような言葉が、迸り出た。
わかっている、とばかりに又左の動きが激しくなる。
どくどくと体が波打ち、まつの目の前が白くなってゆく。
強くしがみつくと、夫は長身を丸く屈めて、まつを抱きしめた。
又左はまつの名をつぶやいて、今度こそ、大きな体を震わせ――果てた。

3-023 :満月―みつるつき―:2011/10/24(月) 01:24:51.84 ID:AGjQIj8P



――子が欲しい、と思った。
夫婦の交わりを重ねるほど、深くなるほど、まつは子が欲しいと思った。

信長取り巻きの猛者であるゆえか、とかく荒っぽい愛情に手を焼きつつも、妻として精一杯受け止めて、幸せな日々を過ごしている。
――幸せが過ぎて、少し欲が出てきたのかもしれない。

他のおなごとのことは、ひとまず、にわかに悋気を起こして取り乱すこともない。
年端もいかぬ自分が、又左の行動にいちいち口出しすることも無用だと、幼いながら悟ってもいる。

――こんなにも又左さまに可愛がられているのに。
すぐに子ができるものだと思っていたのに。
――まつが子どもだから?

ようやく又左がまつを解放した後。
いまだ孕まぬ腹のあたりを、小さな掌で撫でつつ、まつは不安を口にした。

「いずれ時が経てばな」と又左は気遣わしいことを口にするが、まつは、やっぱり自分が幼いからだろうか、と不安になるのだ。

「信長様には、子どもが子を生んだら見せに来い、と笑われました」
「そうか、笑っておられたか……なあ、まつ」
「はい」
「前にも言ったが、急がずともよいのだ」
「夫婦のことは、急いでしたのに……」
「ん……いや、まぁ、そう……だな」
「お顔が、赤いです、おまえさま」
「……うるさい」

ふふ、とまるで母親のようにまつは笑った。
又左が体を屈めて、まつを包み込むように、背中から覆う。
温かな胸板にすり寄り、又左を見上げた。
夫の頭越しに、満ちた月が見えた。
明かりとりから、清々とした光が差し込んでいる。

3-024 :満月―みつるつき―:2011/10/24(月) 01:28:26.20 ID:AGjQIj8P


「月だって、孕んでまあるくなるのに」
「こればかりは、俺の思うようにはならん。気の長いまつのことだから、いつのことになるやら、だな」
「……私に男の子が生まれる前に、他のおなごに生ませたら、一生恨みますゆえ」
「肝に銘じておくわ。それにしても、おまえがそんな悋気持ちだとは思わなんだ」
「おなごはみんなやきもち妬きです」
「まったく、末恐ろしいな」

又左は、上になっている自由に動く腕を、まつの腹に伸ばした。
下腹部を優しく撫でる掌に、まつの小さな掌が重なる。

「閨ごとも、やきもちも全部、又左さまが教えてくださったのですからね」
「まあ、そういわれれば……」

言葉を返す又左は、億劫そうだ。
心地よい眠気を感じているらしい。
ゆるゆると、日に焼けた顔を寄せ、愛おしげにまつの頬に頬ずりをした。
緩慢に動きつつも、器用に足に絡まっている着物をふたりの上に引っ張り上げ、上に掛け直してくれる。

月が、窓の端に沈んでいきそうだ。
又左の帰宅の頃に東に昇った月は今、西の空に傾き始めている。

「お月さま、うつくしい」

つぶやくまつに、又左からの応えはない。

「おまえさま……?」

かわりに、健やかな寝息がまつの耳に聞こえてきた。
夫は、腹を満たした子どものような寝顔をしている。
まつはまた母親のような心持ちになり、くすりと笑った。
月も笑っているような気がした。

夫に抱かれ、深い安堵と幸福感に包まれて、まつは安らかだった。
やがて、口元に微かな笑みを浮かべて、同じように目を閉じた。
すぐに、ふたつの寝息が、閨に静かに響き始めた。


ひとつ床で寄り添い眠る、大きな夫と小さな妻は――重なった掌の置かれた腹の内に、新しい命が宿っているのを、まだ知らない。



おわり